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囲碁で対局 (2022年2月製作)


  「ええい!坊門の.跡目は化け物か!?」

私は囲碁と模型作りが趣味なので、ガンダムのプラモデルを使って囲碁のジオラマを作ってみました。
「どうしてガンダムとザクが碁の対局をしているのだろうか」なんて事をいちいち真面目に考えてはいけませんよ。

ちなみに盤面は天保11年11月29日(1840年11月22日)の本因坊秀和と井上幻庵因碩の対局から。
本因坊丈和の引退後、向かうところ敵無しと見た幻庵因碩(42歳)は寺社奉行に名人碁所願書を提出。井門からの名人誕生を阻止すべく坊門が送り込んだ刺客は若干20歳の跡目土屋秀和。明和年間の本因坊察元以来74年ぶりに行われた名人碁所を掛けた争碁4番勝負の1局目がこの対局。実に燃える展開です!
手合は秀和の定先。

黒の秀和(ガンダム)が99手目(10-16)を打った瞬間がこの模型の場面。この手を見て幻庵(ザク)は驚愕した後に長考。悩みに悩み抜いた後、幻庵は吐血してしまいます。
囲碁史上名局は数多くありますが、私はこの「幻庵吐血の一局」がとても好きなのでこの盤面を選んでみました。

製作過程の記録はこちら


傍らでズゴックと猫ちゃん達が観戦しています。
皆さん盤面に夢中です。


こんな所に川端康成揮毫の「深奥幽玄」
昔作ったジムコマンドの盾が余ってたから使ったよ。


ザクの盾にある「局前人無く、局上石無し」という言葉は井上幻庵因碩の『囲碁妙伝』より。
この域にまで達するともはや碁打ちというよりもむしろ哲学者や宗教家の境地なのではないでしょうか。


何故床が傾いているのか疑問に思いますか?
答えは「水平でなければなけない理由が無いから」です。
ジオラマ作品は傾いていたり、不安定な状態の方が面白味が増します。
どうしても水平でなければならない場合を除けば傾けた方が楽しい物になるでしょう。


ジムコマンドの盾を床にぶっ刺したのは「スペースが余っていたから」と「上下方向に作品の高さが欲しかったから」というのが理由です。
床の間を作って柱やら壁やら掛け軸でも作ろうかと思ったのですが、面倒だったので手軽に盾をぶっ刺す事にしました。


何でヒートホークが刺さっているんでしょうか?誰の斧なのでしょうか?
いちいち細かい事を考えてはいけません。
ちなみに全部作り終えた後に碁笥が無いことに気付き、慌てて粘土で碁笥を作りました。


実際の碁番の上に模型を乗せてみました。

イエローサブマリン千葉店の模型コンテストにこれを持っていたところ、銀賞を頂きました。

イエローサブマリン千葉店のツイートより


おまけ話


この対局の棋譜。
注目すべきは91手目のカケ。この手は本因坊家のご隠居丈和も「緩手なり」と判断したとか。
ところが97手目のデがヤバい手。シチョウアタリと左下隅先手の逃げ出しが見合いとなっております。秀和はここまで読んで91のヌルそうなカケを打ったのか!
99手目の後に幻庵が吐血。中断を経て再開した後にまた吐血!
二度の吐血による中断を経て9日間に渡って打たれたこの碁は黒秀和の4目勝ち。幻庵は名人碁所就任を断念する事になります。

ちなみに幻庵さんの吐血ですが、肺結核ではなく一時的なストレス性の急性胃炎だったようで命に別状はなかったらしく、幻庵はその後も長生きしております。


おまけ話その2

さてガンダムと囲碁と言えば、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でギレン・ザビが何故か碁を打っているシーンがありました。これも幻庵因碩の棋譜ですぞ。
1846年09月11日(弘化3年7月21日) に安田秀策(17歳) と井上幻庵因碩(48歳)による「耳赤の一局」という有名な対局がこれです。

「吐血の一局」の敗北により名人碁所を断念した幻庵ですが、6年後、大坂の裕福な商人がスポンサーとなり、若手最注目の安田秀策と、碁界の長老幻庵の対局が企画されます。1局目は2子の手合で始まりますが、秀策がヤバすぎるくらい強かったので途中打ち掛けとし、翌日秀策の定先に手直りして再開されたのがこの「耳赤の局」。結果は黒盤秀策の2目勝ち。
ちなみに秀策はその後20歳から32歳にかけて御城碁19連勝無敗という前人未到の記録を作るのですが、文久2年にコレラに罹患し33歳で夭折してしまいます。安田秀策はヒカルの碁というアニメの主人公にもなったそうで、道策や丈和よりも秀策の方が子供には人気があるらしいです。

さて我らが幻庵はその後、嘉永6年(1853年)55歳の年の6月に長崎から清国に密出国を試みて失敗しております。さすがにジジイ無茶し過ぎでしょ!ちなみにその密航とほぼ同時期にペリー提督の艦隊が浦賀に来航。それから6年後の安政6年(1859年)に幻庵は61歳で亡くなっております。桜田門外の変の前の年だね。


製作記はこちら

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