中学か高校の教科書に書いてある程度の事を子供向けみたいな感じで書いてみました。
●飽和蒸気圧とはなんぞや? -まず基礎的なことから-
湿気の話をする上で欠かせないのが「飽和蒸気圧」というものです。
なんだか難しそうな話のようですが、でも実はとっても簡単な話です。
それでは順を追って見てみましょう。
とりあえずこのややこしそうな実験の図を軽く見てください。
数研出版『第四版 高等学校 化学』より
これは有名な実験です。まぁこの実験は何が言いたいのかを手っ取り早く説明しますと、
・地上の大気圧ってのは水銀を760mm押し上げるくらいの力でそれが1気圧だよ。
・そんでエタノールの飽和蒸気圧は44mmHgだよ。
とこんな感じです。
まず軽くこの事をかじった上で、飽和蒸気圧ってのは一体何者なのかを考えて行きましょう。
まず、自然界にはこういう決まりがあります。
この世の中のすべての液体は気体に変身(蒸発)して、周囲に圧力(蒸気圧)をかけなければならないという使命がある。
そして・・・
この値まで蒸気圧を高めなければならないという、圧力のノルマ値がある。
ノルマ圧力値まで達していない場合、その液体物質は慌てて蒸発して気体になり、蒸気圧を上昇させます。
そしてこのノルマ圧力値の事を飽和蒸気圧といいます。
まだちょっと難しそうな話ですね。では漫画にして見てみましょう。
●絵で見る飽和蒸気圧
さてそれでは上の実験のケースを絵にしてみましょう。
エタノールが注入されました。
真空中に放り出されたエタノール(液体)はこんな事を考えてます。
というわけでさっそく変身!蒸発
今の気温が20℃だとすると、20℃のエタノールの飽和蒸気圧は44mmHgです。
つまりこのエタノールくんはノルマ値の44mmHg(0.058atm)まで圧力をかけなければなりません。
1人じゃとても無理そうなので、スポイトで液体エタノールを注入してあげましょう。
続いてどんどん液体エタノールを注入してあげます。
少しずつエタノールを注入したところ、エタノールの蒸気圧が念願のノルマ値44mmHgに達しました。
試験管はまだビクともしませんが、水銀を44mm押し下げることができました。
ノルマを達成した状態を飽和状態といいます。
さて、これからさらに液体エタノールを注入するとどうなるでしょうか?
飽和蒸気圧というのは達成するべきノルマ値なのですが、その値を超える事も許されていません。
この絵のように飽和している状態ではもうその物質は蒸発しなくなってしまいます。
飽和蒸気圧は温度によって変化する
数研出版『第四版 高等学校 化学』より
各物質の飽和蒸気圧の値は温度によって変化し、温度が高ければ高いほど飽和蒸気圧の値も高くなります。
飽和蒸気圧が高くなると、ノルマの圧力が増えてしまうので液体達は気体に変身して圧力をかけなければならなくなるので、各物質とも蒸発しやすくなり、その結果気体になる物質の数が増えます。
そして当然水も蒸発しやすくなるわけで、空気中の湿気があがるというわけなんです。
●空気中の水蒸気は飽和に達していない
さて、お庭に洗濯物を干してみましょう。当然乾きます。洗濯物の中の水分子が蒸発するからです。 机の上に水を入れたコップを置いておきましょう。これも何日も置いておくとコップの中の水が蒸発してカラッポになります。
蒸発すると言う事は皆さんのおうちの空気中の水蒸気が飽和蒸気圧に達していないからです。
●んじゃ水蒸気が飽和したらどうなるの?湿度ってのは何?
ちなみに空気中の水蒸気が飽和したとき湿度が100%になります。
湿度100%になると洗濯物は絶対に乾かないし、汗をかいてもハンカチでふき取るまで絶対に汗は引きません。サウナの世界ですね。
夏の方が冬より液体が蒸発しやすいのは、夏の方が温度が高いからです。温度が高いと、さっき書いたように飽和蒸気圧(液体が気体に変身して圧力をかけなければならないノルマ)
の値が上昇するのであわてて液体達は気体に変身するからです。だから夏は湿度が高く蒸し蒸しするんですね。
以上で飽和蒸気圧に関するお話は終わりです。
熱エネルギーだとか分子間力だとか、そういう面倒なものはとりあえずおいといて、飽和蒸気圧をノルマ値ととらえて考えてみました。次回はいよいよ模型に関係する話になります。