フィギュアスクラッチ6作目。
最近俺に足りないのは何かと考えのだが、どうやらそれは男気であるという事に気が付いた。そうだ。今日から俺は真の男になる。名前も男らしい名前にするぞ。ゲンだ。ゲンさんだ。はだしじゃないけどゲンだ。今回は男らしくフィギュアを作ってやるからお前らも覚悟しとけよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第1夜
よし、今日からファンドでフィギュアを作るぞ。
他にもう1個作りかけの物があったような気もするけど、アレはアレ、コレはコレだ。男は細けえ事は気にしちゃだめだ。作りてえ時に作りてえものを作れば良いんだよ。男ってのは勢いが大事だからサクっと完成させてやるぞ。お前らも覚悟しとけよ。
昔フィギュアを作りかけたが途中で飽きて辞めて残骸となったファンドの塊があったからこれを芯にして作ってやるよ。ファンドの節約になるしな。今は原油高だから男ならどんどん節約しないと駄目だよな。ファンドと原油は関係ないけどな。
芯になる塊はサイズがちょっと大きかったからナイフで削って一回り小さくしたぞ。豪快にリューターで削っても良かったんだけど、リューターは削りカスが沢山出て困るからナイフで削ってやったぞ。男はなんでも豪快だと思うなよ。時にはチマチマやんのも男なんだよ。
よし、できたぞ。続きは明日だ。
男でも眠いときは眠るからな。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第2夜
左足と腕と頭を付けてそれらしい物ができたぞ。なんかヘッピリ腰っぽいけどいいんだよ。これからはヘッピリ腰ブームが来るんだよ。胸を張って堂々としているだけが男ってわけじゃねえんだよ。
そして体をバラバラに分割するぞ。全部作りこんでから最後に分割するヤローもいるかもしれないが、男なら真っ先に分割するんだよ。出来る男ってのはメシもクソも風呂も分割も早めにチャッチャと済ませちまうもんさ。
芯に使った古いファンドは昔オーブンで何度も焼いたりしていたから黄色く焦げていたりするわけだ。新しい真っ白なファンドと焦げたファンドが混ざってシマシマになってたりするけど男なら細けえ事は気にすんなよ。
それと関係ないけど男でもオシッコは座ってするぞ。立ったままするとシッコが飛び散って掃除が困るからな。文句がある奴はいつでもかかって来いよ。俺はいつも便所に居るからな。
続きは明日だ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第3夜
よし、今日はスカートを穿かせるぞ。
まずは胴体をぶった切るぞ。切るための道具はナイフでもノコギリでもニッパーでもトンカチでも何でもいいぞ。男らしくガツンとやれよ。
そんでファンドを巻きつけるのだ。スカートと腰がくっ付いてしまわないようにマイクロバルーンの粉を降り掛けて表面をカサカサにしておくのはお約束だな。マイクロバルーンが無いならファンドの削りカスの粉でも何でもいいぞ。
オーブンで焼いて乾燥させようかと思ったが、やはり自然乾燥させる事にした。だから今日は終わりだ。そんじゃあばよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第4夜
スカートにひだひだを付け、そして前髪も作ったぞ。
よし、それらしくなった。急いで作ったもんだから何となくヘッピリ腰っぽいけどいいんだよ。前も言ったがヘッピリブームがきっと来るんだよ。明日にはブーム来てるだろうからお前ら覚悟しとけよ。
今日は写真1枚しか撮らなかったけど、これで終わりだ。
ん?「アマガミ」の中でもどうしてこのキャラを選んだかだと?このキャラが髪の毛が一番短くて作りやすそうだったからだよ。それと何故かこのキャラだけ胸にリボンが付いてなかったんで、それも作らなくて済むしな。髪の毛の長さとスカートの丈ってのはフィギュアの作りやすさでは意外と重要な要素だから覚えておけよな。
何だって?最近俺が真面目な話ばかりして説教くさいだと?そんなら明日はウンコの話してやるよ。そんじゃあばよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第5夜
ナイフで削ってヤスリで磨いて色々やってみたぞ。でも急いで作ったから何だか変だな。男は細けえ事は気にしねえけど気にする時には気にするんだよ。
落ち着きが無いような手の位置だったので、そこを直してみたぞ。そういやヘッピリ腰ブームは来たのか?まだ来ねえようなんで続きは明日だ。覚えとけよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第6夜
さて、これで完成か。…と思ったがどうもシックリ来ねえな。
この写真で見るとそれ程問題は無いようにも見えるが、どうも首の付き方が変だ。そして顔が似ていない。さらには未だに世間ではヘッピリブームが来ていない。無茶苦茶な日程で作ったこの作品だが、やはりもうちっと真面目に作った方が良いのかな。少なくとも頭部はしっかり作った方が良いかもしれないな。
そんなわけで顔と前髪を作り直す事にした。でもこの写真ではあんまり違いがわからんな。腕も上がったり下がったりしているが、この位置で決定という事にするか。そしてサフを吹いたぞ。
ところでお前ら。最近の俺は造型に迷いが生じて男らしくないとか思ってるんじゃねえだろうな?言っとくが断じてそんな事はねえぞ。言っておくが今夜もこれから俺は犬の散歩に行くんだからな。犬は飼ってねえけどな。飼ってない犬の散歩に行くのが真の男なんだよ。エアギターならぬエアー犬の散歩ってやつさ。
そんじゃあばよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第7夜
お前ら、最近このゲンさんのキャラにブレが生じてるんじゃないかとか余計な心配してんじゃねえだろうな?今日は顔を作ってやるから覚悟しとけよ。
よし、できたぞ。顔を作る際に大事なのは左右対称を保つ事だ。特に頬の高さと眼球の高さをちゃんと揃えておかねえと、どんなにしっかり目を描いても斜視のように左右の目の視点が合わなくなってしまうからな。でも完全に左右対称だと面白くねえから何故か耳は左の片方だけ作って左右非対称にしてやったぞ。真の男ってのは時々へそ曲がりになるという事を忘れんなよ。
次は前髪だ。前髪のように細かいパーツはファンドだと強度が保てないからここだけパテで作るという連中も居るかもしれない。だが真の男なら前髪もこのようにファンドで作れ。いやむしろ強度が必要な所こそスカルピーのような脆い素材で作るのが真の男だな。次回作は俺も前髪だけスカルピープレイをかましてやるからお前ら覚えとけよ!
そして合体だ。これは「アマガミ」というゲームの七咲逢というキャラなのだが似ているだろうか?似ていなかったら脳内補完で似てることにすればいいから気にするな。元絵に似てるかどうかなんてそんなに気にしなくていいぞ。そもそもこのフィギュアの場合は元になる絵なんて無いしな。作った本人が「ウルトラマンです」と言えばそれはウルトラマンだ。
サフを吹いたぞ。「フィギュアは顔が命」とか抜かす輩がいるかもしれんが、男ならそんなもん気にすんなよ。確かに顔も大事だが肩や腰のほうがもっと大事だと俺は思うから、顔なんてテキトーでいいんだよ。ベースとドラムが下手だと楽曲が成り立たんが、ボーカルは音痴でもロックバンドが成り立つのと同じだな。
そんじゃ続きは明日だ。あばよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第8夜
昨日は顔作りをしたわけだが、体の方は現在こんな状態だ。
今度こそこれで完成か…と思ったが、まだ何か足りねえな。別にこれで完成でも良いのだけれど、何かが足りん。短時間で作ったとはいえ、どうもイマイチだ。髪の毛もスカートも短く服装もありふれた普通の学生服という、フィギュアとしてはおとなしめなモチーフではあるのだけれど、まだ色々遊べそうな気がする。
スカートを少し広げて動きを付けてみる事にした。あと左腕がやや落ち着きが無い姿勢だったので、腰の後ろに回してみることにした。
さらに上着をもっと(写真左方向に)広げてみる事にしたぞ。これで終わりという事にするか。
それにしても一度サフを吹いた後でファンドを盛り付けて修正するということは出来ればやりたくないものだ。ファンドとサフは相容れないのでシンナーでサフを剥がさなければならないし、何と言ってもやり直すなんて男らしくない行為であるからだ。やはり真の男なら悩んだりせずにファンド造型一発、サフ吹き一発で決めねばならんな。次回作は俺も3日くらいでサクっと作ってやるから覚えておけよな。
続きは明日だ。恐らく明日で完成になるだろうから文句がある奴は今のうちにハガキに書いて速達で俺んとこまで送って来い。切手もちゃんと貼れよ。俺の住所は教えてやんねえけどな。そんじゃあばよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 第9夜
というわけで制服にボタンを付けて完成だ。そんで表面を磨いてツルツルテカテカにしたぞ。表面を磨く際はコンパウンドを使う奴もいるようだが、そこまでせんでもティッシュで擦ってサフ層を磨くだけで充分テカテカになるぞ。
もしかしたらまだ修正点があるのかもしれないが気にすんな。気にしてたらいつまで経っても完成しねえからな。顔と体があって手と脚がついてればとりあえずフィギュアって事になるから心配すんな。前にも言ったが作った本人が「ゴジラのフィギュアです」と言えばそれはゴジラなんだ。男なら出来は気にすんな。完成まで辿り着く事が出来るか否かが最大の問題点であって、その作品が上手いか下手かなんてのは8番目くらいの問題点だって事を忘れんなよ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 複製編
全体の配置を考えるぞ。だが言っておくがこれは女子供のやる事だ。男なら頭で考えずに直感でダイレクトに粘土に埋めろ。
つーことで粘土に埋めているところだ。いいか豚ども、複製には色々コツが要るらしいけどな。んなもん全部ウソだ。入り口と出口さえあれば湯は流れるからな。テキトーでいいぞ。
全パーツ埋め終わったぞ。
ダボなんて打たなくていいぞ。あんなもん打つのは女子供だけだからな。男なら気合で型をすり合わせるんだ。
粘土埋めも終わったところでシリコンを流すぞ。
シリコンの量を軽量カップや秤などで量ったりして使うガキが居るらしいがな、あんなのは女子供のやり方だぞ。
真の男はこうだ。ダイレクトに缶の中に硬化剤を注いで混ぜろ。硬化剤の量は多少間違っててもちゃんと固まるからテキトーで良いぞ。
なんだって?こんなやり方ではシリコン1缶分が全部硬化してしまうだと?おいおい、勘弁してくれよ。これで何度目の説教だよ。お前らまだ分かってねえのか。男ならケチケチすんじゃねえ。1缶丸ごと混ぜて余った分は全部捨てろ。シリコンは空けた際に全部使い切る。これが男だ。
ちなみにシリコン缶の質量はだいたい200g、蓋が20g程度だって事を覚えておけば缶の中のシリコンの量が大体把握できるが、そんな女々しいチマチマした事は一切気にせんで良いぞ。
シリコンが固まったら粘土剥がすぞ。
ん?なんだと?男はダボなんか打たねえなんて言っときながら実はしっかり打ってるじゃないかだと?男なら細けえ事にこだわんなよ。
シリコンバリヤーを塗るぞ。
ちなみにバリヤーコートは無色透明なのでどこに塗ったかが分かり辛い。よってコピックインクなどで色を付けるという手もあるが、こんなやり方は女子供のやる事だ。
男なら色なんか付けずに透明色のまま塗りたぐれよ。塗り忘れなんて恐れるなよ。
シリコン部分にのみ塗ってパーツには塗らないのがコツらしいが、男なら細けえ事は気にしなくて良いぞ。そんでシリコンバリヤーを塗り終えたらまたシリコンを流すぞ。
さて、反面のシリコンも固まったらパカっと開いて出来上がりだ。
型が出来たからと言って安心するなよ。むしろ型作りはここからが本番だ。
これから空気抜きを彫っていくわけだ。入り口があっても出口がないと液体は流れないからな。口から飯食って尻から糞を出すのと同じだな。俺の場合はあらかじめ爪楊枝を埋めて大まかな空気抜きラインを作っているわけだが、真の男を目指すお前らは入り口も出口も全部一からナイフで彫れよ。
出来上がった型に試しにキャストを流してみた。ほとんど上手く流れたが、左下の胴体のパーツだけちょっと流れていないな。まぁこれは入り口が狭いだけだからゲートを広げてやれば流れるから問題ないな。
そんなこんなで成型したレジンキャストキットに色を塗ってできあがりだ。彩色後の完成写真については展示場の方を見てくれ。
■ 男ゲンさんのフィギュア日記 最後はベース編
さて、これで完成…と思ったそこのお前。さんざん説教してきたのにまだ分かってねえようだな。本当にお前は理解力の悪い昆虫野郎だ。このままではただ「ゲームのキャラクターをフィギュアにしました」というだけで何の意味も持たねえだろ。真の男がこんな意味の無い事をするとでも思っているのか?いいか、よく聞けよ。本当の模型製作はこれから始まるんだ。覚悟しとけ。
これまで作ってきた物は、料理に例えるならあくまで前菜に過ぎない。ではこれから主菜を作るぞ。
素材はこの木製のベースを使うことにする。これにサーフェイサーを吹いて目止めして、ラッカー塗料で色を付けるぞ。とりあえず青く塗ってみるか。
青く塗ったらその上にプリンタで印刷した物を貼って完成だ。「アマガミ」というゲーム名を聞いてまずこれを思い浮かべた。要はただの駄洒落だ。
製作した作品の上にオマケで作ったどうでもいいフィギュアを乗せて完成である。俺はただただこのネタをやりたいが為に今日までこのフィギュアを作ってきたのである。真の男ってのはたった1つの駄洒落の為にフィギュアをフルスクラッチするものさ。最近の若造はやたらと気軽にギャグを言いたがるようだが、お前らも真の男を目指したいなら1つのチョイギャグにでも命をかけろよ。
以上で男ゲンさんの模型作り講座も終わりである。お前らも俺を見習って明日から精進してほしい。ではさらばだ。
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