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ホーカータイフーンの主翼の下面は白黒の縞々に塗られているが
これはインベージョンストライプとは別物だよという話

「インベイジョン・ストライプ」とはノルマンディー上陸作戦の際に連合国側の航空機が敵味方識別の為に主翼と胴体に施した白黒のペイントの事である。

(バンド・オブ・ブラザース第1話より アメリカ陸軍航空隊のC-47輸送機)

以下の模型は全てF-toysの1/144ウイングキットコレクションである。

左はスピットファイア、右はタイフーン。
同じ白黒の縞々だけれども実は全くの別物。左はインベイジョン・ストライプ。右は従来からあったタイフーンの識別塗装。


インベイジョン・ストライプは上面と胴体も縞々があるが、タイフーンの縞々は翼の下面のみである。


もう一度裏返して見比べてみよう。
左のインベイジョン・ストライプは等間隔に白黒白黒白。黒線は2本。胴体も同じ。
右のタイフーンの識別帯は黒白黒白黒。細い黒線が4本、その間に太く白。

このように、同じ縞々でも全く違う方式の迷彩であることがわかった。


そもそも何でタイフーンは縞々なんだよ?

インベイジョン・ストライプの縞々はノルマンディー上陸作戦の際に付け加えられたものなのだが、ではそもそも何故ホーカータイフーンは主翼下面が縞々に塗られていたのだろうか?

イギリス空軍にタイフーンが配備され始めた頃、敵国ドイツ空軍のFw190と見間違えられて味方機に誤射されてしまう事件が多発したらしい。

Fw190Dと並べてみた。
そんなに似てるかなぁ…と思ったら結構似てるな。風防が水滴型で垂直尾翼と水平尾翼の位置と形も似てるし、主翼の角度や形も似ている。もしかしたら鼻の短いA型はもっと似ているのかな?

よってドイツ機と間違えないように主翼前縁を黄色く塗ることにしたのだ。

翼端を黄色く塗ったってのは日本軍と同じだね。まぁ一番分かりやすい識別のやり方だよね。

ところがそれでもまだ味方機から誤認されることがあったので、さらに内側機関砲の軸線に沿って幅12インチの黄帯を主翼に描いたらしい。

これでようやく味方機から撃たれることはなくなったのだが、今度は地上の対空砲から敵と間違えられる事件が発生。今度は下から見ても分かるようにスピナーを白く塗り、主翼下面に12インチ幅の黒帯を24インチ間隔で4本描くことになった。

これで地上からの誤射もなくなったのだが、今度は白く塗った機首が目立ち過ぎて敵の航空機から先制攻撃を喰らいやすくなってしまった。そこで機首の白塗りを廃止して主翼下面の黒帯の間を白く塗ることになった。

それでこの細黒-太白-細黒-太白-細黒-太白-細黒の縞々になったわけだ。
ちなみに黒は12インチで、白はその2倍の24インチなのだけれど、この模型だと白帯は黒帯の倍以上の太さになっているな。


そしてやがてこの模型のように上面の12インチ黄帯は廃止された。
でも古参の機体には上面の黄帯は残っていたそうだ。

こうしてタイフーンの縞々塗りは確立したわけだ。ノルマンディー上陸作戦の際には全連合国機がタイフーンの下面と似たような白黒の縞々「インベイジョン・ストライプ」で塗られることになる。当然タイフーンの翼下面の縞々も等間隔の白黒白黒白に塗り直されることになったわけだ。

参考
 Invasion stripes - Wikipedia
 スケールアヴィエーション 2005年7月号
  


おまけ
インベイジョン・ストライプというのはノルマンディー上陸作戦の際に急遽書き足された縞々なので、結構雑に塗られているのだ。


これは実際の記録写真ではなくドラマ「バンド・オブ・ブラザース」の劇中映像なのだが、縞々の部分だけ雑に塗られているのをちゃんと再現しているな。プラモデルを作る際もこの縞々だけ雑に塗るべきなのだろうか。それとも見栄えが悪いからマスキングして綺麗な縞々に塗ってあげるべきなのだろうか。

書いた日:2017年2月
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